在中国日本国大使館経済部 中国経済週報(2020.12.11~2020.12.16)

2020/12/24

産業・金融関連

国家市場監督管理総局、独禁法違反でアリババやテンセント等のグループ企業を処分

  • 14 日、国家市場監督管理総局は、企業買収に際して独禁法上必要な届出を行わなかったとして、アリババ投資有限公司、閲文集団(電子書籍事業等。テンセントグループ)、豊巣ネット(スマート宅配ボックス事業。順豊ホールディングス関連企業)の三社に対して、それぞれ 50 万元の制裁金を課す行政処分を行った(注)。

(注)大手インターネット関連企業が独禁法違反で処分を受けたのは、確認できる範囲では初事例。ただし、手続違

反を理由とした処分であり、本件各買収には市場競争を制限する効果はなかったと認定されている。

  • 11 日、デジタル人民元の試行実験の場の一つである江蘇省蘇州市は、デジタル人民元の「紅包」総額 2,000 万元、一人当たり 200 元を、当選した蘇州市民 10 万人に配布した。同日から 27 日まで使用可能。今回は、10 月の深センでの試行実験と異なり、京東等 EC プラットフォームでも使用可能であり、ネットに繋がっていない状態でも一部使用可能となっている。
  • 10 日、高峰・商務部報道官は定例記者会見で、多くの日系企業が中国から撤退しようとしているとの噂(注)に対し、「大部分の在中国日系企業は中国市場からの撤退を考えていない」「中国は超大規模な市場を有しており、完全な産業支援の能力と十分な人材資源、良好なインフラ施設を有しており、いわゆる『対中国依存の減少』は市場法則に合致しない」等と述べた。

(注)日本の「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金(第二弾)」への応募が 1,670 件、総額約 1

兆 7,640 億円となり予算額の 11 倍に達した、との各種報道が発端とみられる。

  • 16 日、発改委・商務部は連名で「市場参入ネガティブリスト(2020 年版)」を公表した(通知文書は 12 月 10 日付)。国内外企業の参入を制限・禁止する分野を 123 項目(注)とし、昨年の 131 項目から減少させた。主な変更点として、二酸化炭素排出権の取引評価機構に対する資格認定等の 3 分野への参入を開放した他、輸出入商品検査業許可等の参入審査に係る 14 条件を削除した。

(注)このうち、当局の許可が必要な参入許可類は 118 項目、一律に参入を認めない参入禁止類は 5 項目。

マクロ経済関連

  • 15 日、国家統計局は主要経済指標を公表した。鉱工業生産は前年同月比 7.0%(前月から+0.1)、小売総額は 5.0%(+0.7)、投資(1-11 月)は 2.6%(+0.8)となった(注)。
  • 同日、国家統計局報道官は記者会見で、経済情勢を以下のとおり評価した。

(1)中国経済は回復の勢いが続いている。10-12 月期の成長は、7-9 月期よりも加速が続くとみられ、年間の成長率も比較的良い水準に保つことが期待される。

(2)来年は、経済が徐々に潜在成長レベルに戻る可能性が高い。今年のベースが低いことから、来年の成長率は比較的高くなるかもしれないが、これは経済に顕著な変化が起こったことを意味する訳ではない。

(3)秋冬期に入り海外では感染症が再び流行しており、不安定・不確定要素は依然多い。

(注)生産は、電気機械器具製造業を始め、幅広い業種で好調が続いた。小売総額は、商品小売が前年同月比 5.8%まで回復したが、外食は▲0.6%と小幅なマイナスとなった。投資は、年初来累計の統計のみ公表されるところ、民間エコノミストの試算では、11 月単月では 10%前後のプラス成長とされる(不動産開発投資等がけん引)。

  • 10 日、アジア開発銀行(ADB)は「アジア経済見通し」の改訂版を公表した。中国の成長率について、2020 年の予測値を 2.1%(9 月時点から 0.3 ポイントの上方修正)、21 年は 7.7%(据え置き)とした。
  • 14 日、中国社会科学院は「2021 年中国経済形勢分析・予測(経済青書)」を公表した。中国の成長率について、2020 年の予測値を 2.2%程度(7 月時点から 1.0 ポイントの下方修正)、21 年は 7.8%程度(初出)とした。

各種統計の公表

  • 11 月生産、消費、投資~11 月生産は前年同月比 7.0%増、前月比+0.1pt(15 日 国家統計局発表)

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※民間固定資産投資額の固定資産投資総額に占める割合:55.7%(1-10 月累計比横ばい)

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  • 10 月住宅価格~前年同月比 4.0%上昇(14 日 国家統計局発表)

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  • 11 月訪日中国人旅行者数~前年同月比 97.6%減(16 日 日本政府観光局発表)

 

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■:日本関連記事

1.概況・マクロ経済政策

□習近平・国家主席は 12 日、国連気候野心サミットで、パリ協定の実現に向けて、中国は 2030 年までに GDP 単位当たりの二酸化炭素排出量を 2005 年比で 65%以上低下、非化石エネルギーが一次エネルギー消費に占める比率を 25前後に到達、森林蓄積量を 2005 年比で 60 億㎥増加、風力発電・太陽光発電の総設備容量を 12 億 kW 以上に到達することを宣言した。また、①気候ガバナンスにおけるウィンウィン協力の新局面を切り開く、②各国が最善を尽くし、気候ガバナンスの新構成を形成していく、③気候ガバナンスにおける「グリーン・リカバリー」という理念を堅持していくなど 3 つのイニシアティブを提出した。(12/13 経済日報 p1)

□8 日、中共中央委員会は中南海で党外人士座談会を開催し、中央経済工作会議の開催前に、経済情勢と翌年の経済活動について、各民主党派中央・全国商工連合会責任者・無党派代表の意見・提案を聴取した。座談会で習近平・総書記は、党外人士が「第14 次五カ年計画」の制定と実施、特に来年の経済活動をしっかり進めるために積極的に提言し、政治的責任を担うことを希望すると述べた。(12/11 新華網)

□11 日、習近平・総書記の主宰で中共中央政治局会議が開催された。会議では中国経済の運行が徐々に正常な状態に回復しているものの、新型コロナウイルス感染症や外部環境はなお多くの不確定性が存在すると強調し、2021 年は引き続き「六つの安定」業務に取り組み、「六つの保障」任務を実施し、科学的かつ正確にマクロ政策を実施し、経済運営を合理的区間に保つよう努力しなければならないと指摘した。また会議では供給側構造改革をしっかりと行うと同時に、需要側の改革を重視し、行き詰った点を打開し、脆弱部分を補い、生産・分配・流通・消費の各段階を貫通させ、需要が供給をけん引し、供給が需要を創り出すより高いレベルの動態バランスを形成することを要求した。(12/11 新華網)

□李克強・国務院総理は 9 日、国務院常務会議を招集した。会議は、国民の健康・安全に対するニーズに適応するよう保険の拡充・質向上を図る方針を打ち出した。また会議では、「医療保障基金使用監督管理条例(草案)」と「汚染排出許可管理条例(草案)」が採択された。(12/10 人民日報 p1)

□アジア開発銀行(ADB)は 10 日、経済見通しの改訂版を発表した。中国については、2020 年の予測値を 2.1%とし、従来の 1.8%から上方修正した。 21 年は 7.7%とし、従来の予測値から据え置いた。(12/10 アジア開発銀行)

□中国社会科学院は 14 日、2021 年中国経済形勢分析・予測(経済青書)を発表した。中国の経済成長率について、2020 年の予測値を 2.2%程度、21 年は 7.8%程度とした。(12/8 中国社会科学網)

□中国国家統計局は 15 日、11 月分の主要経済指標を発表した。鉱工業生産は前年同月比 7.0%増、小売売上高は前年同月比 5.0%増、固定資産投資は 1-11 月累計の前年同期比 2.6%増となった。(12/15 国家統計局)

2.財政

□財政部は 9 日、「財政領収書管理弁法」を修正し、電子領収書の取扱について、紙の領収書と同等の法的効力を持つことを認めると発表した。(12/10 経済日報 p6)

3.金融・為替

□中国人民銀行が 9 日発表したデータによると、11 月の人民元建て貸出増加額は 1 兆 4,300 億元で、前年同期比を 456 億元上回った。11 月末時点の M2 残高は 217 兆 2,000 億元で、前年同期比 10.7% 増加した。伸び幅は前月末と前年同期をそれぞれ 0.2 ポイント、2.5 ポイント上回った。M2 の伸び

幅は 9 カ月連続で 2 桁になった。(12/10 経済日報 p5)

□中国人民銀行と蘇州市人民政府は11 日、蘇州市市民10 万人に総額2,000 万元の「デジタル人民元」を配布し、電子商取引プラットフォームでの使用も含めた実証実験を始めた。(12/14 経済日報p2)

□中国金融認証センターが 10 日発表した「2020 中国電子銀行発展報告」によると、2020 年オンライン銀行の個人ユーザー件数は 59%に達し、前年同期を 3 ポイント上回った。個人携帯電話オンライン銀行ユーザー件数は 71%を占めた。(12/11 経済日報 p4)

□ナスダックは 11 日、米政府の行政命令に従い、中国交建・中国鉄建・中国中車・中芯国際の

4 社を 21 日よりその指数から排除すると発表した。外交部は 14 日、中国の市場開放度は高まっており、投資家の中国株式配置は日増しに便利になり、個別の企業が一部の国際指数に含まれないことは、国際投資家がその他多くの方法によりこれらの企業に投資し、中国発展の恩恵を享受することを妨げるものではないと述べた。(14 日ロイター、外交部)

4.貿易・海外直接投資

□英国国家統計局(ONS)によると、今年第 2 四半期の中国から輸入された商品金額は 110 億ポンド

(約 965 億元)に達した。中国は英国にとって最大の輸入相手国になった。(12/10 国際商報 p1)

□商務部は 10 日、豪州を原産地とするワインに対し、12 月 11 日より反補助金の相殺関税措置を課す仮決定を発表した。(12/11 国際商報 p1)

□国家鉄道集団によると、中国と欧州を結ぶ国際定期貨物列車「中欧班列」の運行本数が 11 月は前年同月比64%増の1,238 本になり、運送量は前年同期比73%増の11 万5,000TU に達した。(12/14 人民日報p1)

5.産業・企業(国有企業を含む)

■高峰・商務部報道官は 10 日、定例会見で、中国市場からの多くの日系企業が撤退したとの報道に

ついて、「そうした説はまったく根拠がない」と指摘したとともに、今年 1-10 月に中国へ進出した

日系企業が 604 社あり、日本による中国への実行ベース投資額が 202 億 6,000 万ドルに達したと述べた。(12/10 商務部、12/11 経済日報 p4)

□中国自動車工業協会によると、中国の新車生産と販売台数が 11 月は前年同月比それぞれ 9.6%と 12.6%増の284 万7,000 台と277 万台に上り、いずれも8 カ月連続のプラス成長となった。1-11 月累計の自動車生産と販売台数はそれぞれ2,237 万 2,000 台と2,247 万台だった。同協会は、通年の販売台数が2,500 万台に達し、前年比での減少幅は2%以内に収まるとの見通しを示した。(12/14 人民日報p1)

□羅俊潔・工業信息化部装備工業司司長は、最近 4 カ月の農村普及型新エネルギー車の売上が 18 万台以上であったと述べた。(12/13 経済日報 p4)

□国家市場監督管理総局は 14 日、アリババ投資有限公司、閲文集団(電子書籍事業等、テンセント

グループ)、豊巣ネット(スマート宅配ボックス事業。順豊ホールディングス関連企業)の3 社に対し、

独禁法上の事業者集中の届出義務違反により、それぞれ 50 万元の制裁金を科すことを決定した。

(12/14 市場監督管理総局)

□中国サッカー協会は 14 日、上海において 2020 年中国サッカープロリーグ特定項目管理工作会を開催し、中超・中甲・中乙リーグの各クラブに対し、2021 年のシーズン開始までにクラブの名称を企業名や株主名等を冠さないものに変更するよう要求する通知、及び選手の報酬について以下の通り定める通知を発表した。国内選手について個人の報酬は 500 万元以下、グラブ第一線チームの平

均報酬は毎シーズン 300 元以下、外国籍選手について個人の報酬は 300 万ユーロ以下、クラブ総額

で 1,000 万ユーロ以下とすること等。(12/14 中国サッカー協会)

6.農業・農村

□国家統計局は 10 日、2020 年の全国食糧生産量が前年比 0.9%増の 6 億 6,949 万トンに達し、6 年連続で 6 億トンを超えたと発表した。中国の食糧生産は 17 年連続の豊作になった。また、作付面積は前年比 0.6%増の 1 億 1,676 万ヘクタール、サンプル調査に基づく単位面積生産量は前年比 0.2% 増の 5,734 キログラム/ヘクタールであった。国家統計局農林司司長・李鎖強は、2020 年は各地が食糧生産支援を強化し、各レベルの食糧生産責任を明確にし、積極的に補助金政策を実施したことにより、農民の積極性を高め、作付面積が縮小から拡大に転じた等と指摘した。(12/10 国家統計局、12/11 人民日報 p1)

7.労働・社会保障

□教育部は 10 日、2019 年末時点の中国における 9 年制義務教育率の定着率は 2015 年比 1.8%増の

94.8%であり、2020 年 11 月末までの義務教育段階における退学者数は 831 人にまで減少したと発表し、2020 年には義務教育定着率を 95%にするという目標を達成するための基礎を打ち固めたと評価した。(12/10 教育部、12/11 人民日報 p13)

□国家統計局は 15 日、1-11 月の全国新規雇用が 1,099 万人に達し、今年の目標の 122.1%を達成したと発表した。(12/15 国家統計局)

8.環境・エネルギー

□自然資源部は 10 日、「国土空間調査・計画・用途規制・土地利用海洋分類指南(試行)」を発表し、土地利用および海洋利用に関する分類基準を統一させ、国土開発・使用をより科学的に行う方針を示した。(12/11 人民日報 p5)

□国家林業・草原局によると、第 13 次五カ年計画期間中における砂漠化防止・整備の国土面積は

1,000 万ヘクタール以上に達した。中国の北方地域で発生した黄砂の回数は 43 回(うち砂嵐は 12 回) で、第 12 次 5 カ年計画期間と比べると 29%減少した。(12/12 経済日報 p4)

□12 日、水利部は「南水北調(水資源が不足する北部に南部の水を引き入れる大規模送水プロジェクト)」の東・中線第一期工事の全面的通水後、6 年間の累計送水量が394 億リットル以上で、1 億2,000 万人以上に直接裨益したと発表した。うち中線の送水量は348 億リットルであり約6,900 万人に裨益し、東線は山東省にむけて46 億リットル送水し、約5,800 万人に裨益した。(12/11 水利部)

9.科学技術・イノベーション

□10 日、ネイチャー・インデックス誌 AI 増刊号によると、2019 年の中国のAI 関連論文数は世界第 2 位であった。2015 年の論文数は,中国は世界4 位でドイツの約半分だったが、昨年は2015 年比で340%増となり,同時期の米英独が100%をやや上回る増加であったのに対し,大幅な伸びとなった。なお,2015−19 年通算の1−4 位は米国、英国、ドイツ、中国。また、機関別論文数は 1-3 位は米国ハーバード大学、スタンフォード大学、マサチューセッツ工科大学,7 位に中国科学院であった。一方,AI の技術開発というより広範な分野を網羅するDigital Science のデータベースであるDimensions においては,1-6 位が清華大学、中国科学院大学、上海交通大学,北京航空航天大学,浙江大学,ハルピン工業大学,8 位に中国電子科技大学が入り,また国別では中国が1位であった。(12/10 中国新聞網)

□国家宇宙局によると、嫦娥 5 号の軌道モジュールと帰還モジュールの結合体は 12 月 12 日午前 9

時 54 分、月面から約 200 キロの楕円軌道上を移動した。(12/13 人民日報 p3)