在中国日本大使館経済部 中国経済週報(2021.4.22~2021.4.28)
マクロ経済・金融関連
「グリーンボンド・サポート・プロジェクト・カタログ(2021 年版)」が公表
- 21 日、人民銀行・発改委・証監会が、グリーンボンドの対象となるプロジェクト・事
業分野等について定めた「グリーンボンド・サポート・プロジェクト・カタログ(2021 年版)」を公表した。2015 年 12 月公表版を、昨今の国内におけるグリーン発展戦略や国際的な動向等を受け改訂したもの。
- 主な変更点としては、国際的に主流なグリーンボンド基準のサポート対象には含まれていないことを理由として、石炭等の化石エネルギーの生産とクリーン利用に関するプロジェクトをグリーンボンドの対象から外している。
1-3 月期の各省 GDP が公表
- 28 日までに本年 1-3 月期の 31 省・自治区・直轄市の GDP が公表された。新型コロナの影響で昨年の 1-3 月期ベースが低かったことから、前年同期比では全地域で二桁の成長率となった。上位 3 省は湖北省(+58.3%)、海南省(+19.8%)、浙江省(+19.5%)。
(注)下位 3 省は①新疆ウイグル自治区(+12.1%) ②黒竜江省(+12.4%) ③青海省(+12.8%)。経済規模の上位は
①広東省(2 兆 7,118 億元、+18.6%) ②江蘇省(2 兆 5,878 億元、+19.2%) ③山東省(1 兆 8,056 億元、+18.0%)。
産業関連
美団に対する独禁法違反調査が開始
- 26 日、国家市場監督管理総局は、フードデリバリー等のインターネットプラットフォ
ーム大手である美団に対し、「二者択一(注)」を迫ったことが独禁法に違反する疑いがあるとして、調査を開始した旨を公表した。
(注)中国語:「二選一」。取引先に対し他のプラットフォームを利用しないよう要求する行為。アリババによる同様の行為については、4 月 10 日に行政処分が行われている。
7 部門が共同で「ネットワークライブコマース管理弁法」を公表
- 23 日、国家インターネット情報弁公室・公安部・商務部等 7 部門が共同で「ネットワークライブコマース管理弁法」を公表した(5 月 25 日施行)。近年のライブコマースの成長(注 1)を受け、主として消費者保護の観点から、プラットフォームやライブコマースを行う者の義務等を定めるもの(注 2)。
(注 1)人民日報中国ブランド発展研究院「中国映像社会化情勢報告(2020)」によれば、2020 年の中国のインターネットライブのユーザー数は 5.6 億件、うちライブコマースのユーザー数は 3 億件以上。
(注 2)例えば、プラットフォームによるライブ内容の管理義務や、ライブコマースを行う者による虚偽の商品情報の公表禁止等の義務が定められている。
中国デジタル経済発展白書が発表
- 25 日、工業・情報化部傘下の中国情報通信研究院は「中国デジタル経済発展白書(2021)」を公表した。2020 年の中国のデジタル経済の規模は 39.2 兆元(前年から+3.3 兆元)に達した。成長率は 9.7%で、名目 GDP 成長率を 6.7 ポイント上回った。GDP に占める比率は 38.6%(前年から+2.4 ポイント)となった。
4 省市のサービス業の自由化拡大措置が発表
- 23 日、商務部は 4 省市(天津市・上海市・海南省・重慶市)におけるサービス業の自由化拡大試験の実施プランを発表した。試験期間は 3 年。産業自由化・地域発展・体制構築・政策面での保障の 4 分野で 203 項目の方針を示した(注)。
- サービス業の自由化拡大実験は、4 省市に先んじて 2015 年 5 月から北京市で実施。今回は実施範囲・分野を拡大し、対外開放水準を向上させるもの。外資に対してはファイナンス会社の独資設立、観光アウトバウンド業務、銀行の貿易に関する保証状業務等の参入規制緩和等が盛り込まれている。
- 4 省市の重点開放分野は以下のとおり。
(1)天津市:デジタル・金融・物流・貿易・情報サービス・医療ヘルスケア・教育。(2)上海市:通信・インターネット・医療・交通運輸・文化・教育。
(3)海南省:観光・交通運輸・金融・ビジネスサービス・技術サービス・医療ヘルスケア・教育・文化娯楽。
(4)重慶市:ハイテクサービス・リースビジネスサービス・教育・金融・衛生社会事業・電力通信。
(注)同日の記者会見で商務部は、4 省市が選ばれた理由について、サービス業発展の基礎があり、地域・産業を代表する都市で、全土のサービス業の自由化に対し模範的作用があることとした。
知的財産強国の建設加速
- 25 日、国家知的財産局は記者会見で、第 14 次五カ年計画を貫徹・実施し、知的財産強国の建設を加速する旨を述べた。会見では、第 13 次五カ年計画期間中、知的財産権使用料の輸出額が 86.8 億米ドル(年平均 51.6%増)に増加、特許権・商標権を担保にした融資額が 848.5 億元から 2,180 億元に増加する等、主要指標を全て達成したこと、「知的財産強国戦略綱要」及び第 14 次五カ年計画「国家知的財産保護・運用の重点特別計画」の制定・実施に取り組む方針が示された。
各種統計の公表
- 3 月直接投資~1-3 月累計の対外直接投資額は前年同期比 2.4%増(4 月 25 日 商務部発表)
概況・マクロ経済政策
□25 日、高峰・商務部報道官は、国内消費市場の回復・拡大を目指す「2021 年全国消費促進月間イベント」が5 月1 日から上海市でスタートすると発表した。(4/26 国際商報p1)
□22 日までに、全国 22 の省(直轄市・自治区)の 1-3 月期GDP 成長率が発表された。湖北省は前年同期比+58.5%、海南省は+19.8%(2 年平均+7%)、江蘇省は+19.2%(2 年平均 6.4%)と、全国平均(+18.3%) を上回った。他方、黒竜江省は+12.4%(2 年平均+1.5%)と低い水準となった。(4/26 21 世紀経済報道p1,5)
財政
□21 日の財政部発表によれば、1-3 月期の全国一般公共予算財政収入は5 兆7,115 億元で、前年同期比+ 24.2%、2019 年同期比+6.4%、2 年平均+3.2%となった。(4/22 人民日報p1)
□20 日の財政部発表によれば、1-3 月期の全国で発行された地方政府債券は8,951 億元に上った。内訳は、一般債券が5,210 億元、特別債券(レベニュー債)が3,741 億元。(4/22 国際商報p1)
□国家税務局はこのほど、1-3 月期の税収データを発表した。全国企業の売上収入は前年同期比+50.5%、2019 年同期比+27.2%、2 年平均+9.6%であり、全国の納税市場主体数は前年同期比+86%、2019 年同期比+34.9%、2 年平均+16.1%の 279 万2,000 戸となった。(4/26 人民日報p10)
□財政部・税関総署・税務総局はこのほど、科学研究機関・学校・図書館等が輸入する国内生産不能の科学技術研究や教育用品について、輸入関税の免除などを盛り込んだ税優遇策を発表した。(4/22 国際商報p1)
金融・為替
□銀保監会の発表によると、1-3 月期末時点の銀行業総資産は前年同期比+9.2%の 329 兆 6,000 億元、総負債額は前年同期比+9.2%の 302 兆元となった。(4/22 人民日報 p10)
□国家外貨管理局の発表によると、1-3 月期の銀行為替決済における人民元買いは米ドル建てで5,902 億米ドル、外貨買いは 5,061 億米ドルで、為替取引の黒字は 885 億米ドルだった。同局は、「中国の為替市場の推移は安定し、クロスボーダー資金の流動も全体的に安定し、国際収支は基本的な均衡を維持している」との見方を示した。(4/24 人民日報 p2)
□23 日、人民銀行は 4,399 社の銀行業金融機関に対する評価の結果を発表した。2020 年 10-12 月期の評価結果が安全圏外の機関は 442 社(前期から▲132 社、前年同期から▲103 社)となり、資産の98%が安全圏内とのデータを示した。(4/23 人民銀行)
□人民銀行・発改委・証監会はこのほど「グリーンボンド・サポート・プロジェクト・カタログ(2021 年版)」を配布した。同カタログは、石炭などの化石エネルギーのクリーン利用など CO2 排出プロジェクトを支持の範囲から外し、グリーン債券の関連管理部門のグリーン項目の定義基準を初めて統一した。(4/21 人民銀行)
貿易・海外直接投資
■25 日、RCEP メンバー国の貿易促進機構と商業協会が共同で協議し発起した「RCEP 地域経済貿易協力を共同で推進する青島イニシアティブ」が青島にて発表された。同イニシアティブは、各国が地方で先行試験を行うことを支持し、中小企業の発展と経済技術協力を促進することを望むとしている。(4/25 新華網)
□商務部は 25 日、中国企業による 1-3 月期の海外直接投資が前年同期比+4.6%の 2,061 億 4,000万元(317 億 9,000 万ドル)で、うち非金融業直接投資額は前年同期比▲4.9%減の 1,608 億 1,000 万元(248 億ドル)だったと発表した。(4/26 国際商報 p1)
産業・企業(国有企業を含む)
□20 日、国務院は天津市・上海市・海南市・重慶市の 4 省・直轄市によるサービス業の開放拡大の総合試験実施案を承認したと発表した。(4/21 国際商報 p1)
□21 日、国家市場監督管理総局は 2020 年度食品安全サンプルリング検査情報を発表し、通年 638 万件余りのサンプルを検査し、不合格率は 2.31%で、2019 年ほぼ横ばいとなったとした。同局は、中国の食品安全情勢は安定の中で良い方向に向かっているとの見方を示した。(4/22 人民日報 p10)
□工業・情報化部によると、1-3 月期の電信業務収入は前年同期比+27.4%の 3,845 億元だった。また、電信 3 社の第 5 世代(5G)接続端末利用者数は 3 月末時点で 2 億 8,500 万戸に達し、前年末から 8,684 万戸増加し、携帯電話利用者の 17.8%を占めた。(4/23 人民日報p10)
□世界データ分析大手ニールセン社が昨年末に発表した報告書は、「ライブコマース」(ライブ配信型インターネット通販)の市場規模が、2020 年は 9,610 億元に達すると試算した。人民日報中国ブランド発展研究院の報告書は、2020 年に中国のインターネットライブのユーザー数は5 億6,000 万件、うち、ライブコマースのユーザー数は 3 億件を超えたとのデータを示した。(4/23 人民日報 p16)
□国家インターネット情報弁公室など 7 部門はこのほど、「インターネットライブコマース管理弁法」を発表した。同弁法は、プラットフォームがアカウントとライブコマース機能の登録・解約、セキュリティ管理未成年保護、消費者保護、個人情報保護等、データセキュリティ管理のメカニズムと措置を作り健全化するよう要求している。(4/26 新華網)
□中国情報通信研究院は、25 日福州において開幕した第 4 回デジタル中国建設サミットにおいて、「中国デジタル経済発展白書(2021)」を発表した。統計データによると、2020 年中国デジタル経済の成長率は 9.7%で名目 GDP 成長率の 3.2 倍以上であった。(4/25 新華網)
□中国が自主的に建造した初の国産大型航空機の生産・試験飛行センター「中国商用飛行・江西生産試験飛行センター」が 24 日に竣工した。同センターの完成により、国産大型航空機の設計から生産、交付、運営までをシームレスに行う相対的に完成された産業チェーンが形成された。(4/25 人民日報 p4)
□国家市場監督管理総局は、フードデリバリー等のインターネットプラットフォーム大手である美団に対し、「二選一」(二者択一:取引先に対し他のプラットフォームを利用しないよう要求する行為)を迫ったことが独禁法に違反する疑いがあるとして調査を開始した旨を公表した(4/26 国家市場監督管理総局)
農業・農村
□農業農村部が 20 日の記者会見で示したデータによると、1-3 月期の第 1 次産業の付加価値高は前年同期比 8.1%増の 1 兆 1,332 億元であった。また、1-3 月期の農村住民一人当たりの可処分所得は5,398 元で、前年同期比+16.3%となり、都市部住民の伸び率を 4 ポイント上回った。農村出稼ぎ労働者の人数は前年同期比 42.1%増の延べ 1 億 7,400 万人、月収は前年同期比 13.9%増の 4,190 元でとなった。(4/21 人民日報 p3)
労働・社会保障
□住宅と都市・農村建設部、財政部、民政部、国家農村振興局はこのほど、第14 次五カ年計画期間中、農村低所得層向けの住宅に関する動態的なモニタリングメカニズムを整備し、農村低所得者の住宅安全を保障する施策措置を発表した。(4/21 人民日報p14)
□住宅と都市・農村建設部はこのほど、保障性賃貸住宅に関する座談会を開き、保障性賃貸住宅の建設を更に強化し、集団建設用地、企業等の所有する空き地、産業パークの付随用地や空き家を積極的に活用し、低賃料の賃貸住宅の提供などを通じて都会で働く新市民や若者の生活圧力を緩和する方針を示した。(4/21 人民日報p18)
□20 日、国家発展改革委など21 部門は「国家基本サービス標準(2021 年版)」を発表し、幼児教育、学校教育、労働所得、医療、養老、住宅、弱者サポートと軍人優遇サービス保障、文化・スポーツの9 つの分野について現段階の国家基本的公共サービスの具体的な保障範囲とボトムラインを明確にした。発展改革委は 21 日の国務院新聞弁公室の記者会見において、同標準は標準化により公共サービスの均等化を推し進めるための重要措置であると述べた。(4/22 新華網)
□国務院弁公庁はこのほど、「従業員基本医療保険診察共済保障メカニズムの指導意見」を印刷配布した。陳金甫・国家医保局副局長は 22 日の記者会見において、従業員医療保障を個人の累積保障モデルから社会の互助共済保障モデルへの転換を推し進め、普通診察非を統合基金に取り込み精算することにより、医療保険基金の保障機能を増強し、基金の使用効率を引き上げ、外来医療サービスを使用しやすくし、人々、特に高齢者の外来医療費の負担を軽減すると述べた。(4/25 人民日報p6)
環境・エネルギー
□21 日、中国水素エネルギー連盟は第 14 次五カ年計画水素エネルギー産業発展フォーラムを開催した。同連盟は、2020 年末時点で、中国の水素ステーション数は 128 ヶ所、水素燃料電池車の保有台数は 7,000 台以上に上ったと明らかにした。(4/22 人民日報 p10)
□国家エネルギー局によると、1-3 月期の全国の新規発電設備容量(キャパシティ)は前年同期比+ 996 万 KW の 2,351 万 KW で、うち再生可能エネルギーの発電設備容量が全体に占める割合は 50%を超えた。(4/25 人民日報p2)
科学技術・イノベーション
□20 日、IPv6 技術を基礎とした次世代インターネット主幹ネットワークのテスト用ネットワークが清華大学で正式に開通した。同施設は現在世界最大規模の次世代インターネット試験施設となっている。(4/21 人民日報 p8)
□中国気象局はこのほど、気象科学イノベーションの強化に関する方案を発表し、気象分野の開発人材育成を進め、2025 年までに気象科学技術開発者の人数を 2020 年から倍増する方針を示した。(4/22 人民日報 p6)
□データによると、第 13 次五カ年計画期間中、知的財産使用費の輸出額は 5 年連続で二桁の伸びを維持し、2020 年には 86 億 8,000 万元になった。特許・商標を担保にした融資額は 848 億 5,000 万元から 2,180 億元に増加した。申長雨・国家知的財産局局長は 25 日の記者会見にて、「知的財産強国戦略綱要」や第 14 次五カ年計画「国家知的財産保護・運用の重点特別計画」を制定・実施するなど関連業務に取り組む方針を示した。(4/26 人民日報 p2)
□国家航天局は 24 日、「中国国家航天局・ロスコスモスによる国際月科学研究ステーションの共同建設に関する共同声明」を発表した。(4/25 新華網)
□国家航天局は 24 日、2021 年度中国宇宙の日の重要イベントである中国宇宙大会の開幕式典(於江蘇省南京市)で、中国初の火星ローバーの名称「祝融」を正式に公表した。(4/24 新華網)
□清華大学は 22 日、集積回路学院が正式に発足したと発表した。邱勇・清華大学学長は精鋭の力を重要な核心的技術に集中的に投入し、国家が差し迫って必要とするハイレベル人材の育成を加速し、中国マイクロチップの死命を決する難題を解決し、自強の「芯」を作り出し、中国集積回路科学のオリジナルの突破を実現する自主経路を模索し、国家の科学技術の自立自強に戦略的支えを提供すると述べた。(4/23 人民日報)
主要国との経済関係
□21 日、中国のバイオ製薬会社「科興控股生物技術」(シノバック・バイオテック)とエジプト・血清製造大手「VACSERA」社は、北京とカイロにおいて、中国の新型コロナワクチンをエジプトで現地生産する協力協定に調印した。(4/23 人民日報 p16 など)