在中国日本大使館経済部 中国経済週報(2021.3.11~2021.3.17)

2021/03/31

産業・環境関連等

インターネットプラットフォーム企業に対する行政処分(独禁法違反)

  • 12 日、国家市場監督管理総局は、事業者集中(企業結合)に際して必要な独禁法上の事前届出を行わなかったとして、テンセント、美団、ジントン、バイドゥ、ディディ、ソフトバンク等のインターネットプラットフォーム事業者(又はそのグループ企業)に対して、各 50 万元の制裁金を課す行政処分を行った (注)。

(注)大手インターネットプラットフォーム事業者については、同様の違反行為で昨年 12 月にアリババやテンセントのグループ企業が処分を受けている。

インターネット取引監督管理弁法が発表

  • 15 日、国家市場監督管理総局は「インターネット取引監督管理弁法」を発表した。電子商取引の行為を規範化し、プラットフォーム主体の責任を明確にし、消費者の権益を守るための措置を打ち出した。個人情報保護を強化し、虚構取引、誤解を招く口コミ、クリック数の水増し等の新たなタイプの不当競争に対し明確な規制を制定する等した。

「3・15 晩会」の放送

  • 15 日の「国際消費者権益デー」に合わせて、CCTV が消費の安全にかかわる問題を指摘する「3・15 晩会」を放送し、各種事案をとり上げた(注 1)。

(1)KOHLER、BMW、マックスマーラーが、顔認証システムにより顧客の個人情報を取得する防犯カメラを店舗に設置していた問題(注 2)。

(2)赤身肉を増やす添加物を投与された羊肉が市場に出回っていた問題。

(3)フォードがギアボックスの構造上の問題を消費者負担で修理させていた問題、インフィニティの輸入車に異音等が頻発し、ギアボックス交換を複数回行っていた問題。

(注 1)このほか、求職サイトの履歴書の違法な売買、インターネットの速度を下げ高齢スマホユーザーを中心にダウンロード数を稼ぐ APP、360 や UC ブラウザ上の金を支払うことで検索上位に表示させる虚偽広告、使用済み鉄筋の安全性に問題のある再利用、時計修理業者が消磁せず高額な修理代を請求する等の問題が取り上げられた。

(注 2)カメラを提供した業者の一つ(万店掌)によると、識別された顔のデータは推定 1 億以上。

砂塵による大規模・深刻な大気汚染が発生

  • 15 日、中国北部では、モンゴルの低気圧や冷たい大規模な風が原因とされる、この 10 年で最も強く大規模な砂塵の発生により、北京市の一部で一時、PM10 の濃度が 8,000 ㎍

/㎥を超過するなどの、深刻な大気汚染が発生した。これにより、多くの欠航便が生じたり、屋外での活動が制限されるなどの影響が生じた。

(注)北京市と内モンゴル自治区で 600 便以上の欠航が生じたとの報道がある。また、北京市教育委員会は、同日、市内の教育機関に対して、屋外での活動を停止し、健康保護に徹するよう、呼びかけた。

社会保障・雇用関連

定年延長策に関する人社部幹部の見解

  • 13 日、新華社は、金維剛・人社部中国労働社会保障科学研究院院長のインタビュー記事を配信した。第 14 次五カ年計画に規定された、法定退職年齢の段階的延長の実施(注 1) に当たっての 4 原則に関する内容で、概要以下のとおり。なお、五カ年計画発表前後に要人が「弾性実施」原則を具体的に解説したのは初めて。

(1)「小歩調整」原則:定年を毎年数カ月、又は数カ月ごとに 1 カ月ずつ延長していく。(2)「弾性実施」原則:個人が自分で事前に退職時期を選択できるようにする。

(3)「分類推進」原則:異なる集団(注 2)を区別し、異なる地区・職場等の既存政策の差異は改革後も継続性を維持し、政策調整前後の秩序ある接続と安定的移行を確保する。

(4)「統一的計画・各方面配慮」原則:定年延長に関連する一連の政策と保障措置は非常に多くあり、これらの体系を統合的に計画し、共同で推進する。

(注 1)第 14 次五カ年計画の発表時には、法定退職年齢延長が注目を集め、ネット上では反対意見も見られた。

(注 2)中国では、現在、民間企業の法定退職年齢は、男性は 60 歳、女性の幹部は 55 歳、女性の一般労働者は 50 歳。

1-2 月の経済指標

  • 15 日、国家統計局は 1-2 月の主要経済指標を公表した。新型コロナにより昨年のベースが低かったことが影響し、前年同期比では大幅なプラス成長となった。この影響を除去するため、統計局は 2019 年 1-2 月と比較した場合の伸び率と、その一年当たりの

「平均成長率」を併せて公表した。

在中国日本大使館経済部 中国経済週報(2021.3.11~2021.3.17)插图ヨシダ第三社検品会社 HQTS

  • 国家統計局は、同日の記者会見で概要以下のとおり述べた。

(1)主要指標は、昨年から安定的な回復トレンドが継続。ただし回復状況は業種間で不均衡であり、飲食や旅行等は、まだ感染症発生前の水準まで回復していない。

(2)春節期間の帰省自粛で、従業員の休暇日数が大幅に短縮され、生産にプラス寄与し た。ネット小売や宅配業にも促進作用があった。他方、旅行等には抑制効果があった。

(注 1)小売総額の内訳の「平均成長率」:①商品小売 3.8%、飲食収入▲2%。②ネット小売は 16%と大幅な伸び。

③都市部 3.4%、農村部 1.3%。通常は農村部の方が伸び率が高いが、本年は帰省自粛の影響で逆の結果となった。(注 2)固定資産投資の内訳の「平均成長率」は、ハイテク産業投資 11%、社会分野投資 8.8%(うち衛生分野投資20.3%)と高い伸びの分野がある一方で、製造業投資は▲3.4%となった。統計局は、「感染症の予防・抑制の圧力は引き続き存在し、外部環境はいまだ複雑で厳しく、製造業投資の回復には一定期間を要する可能性がある」とした。

  • また、最近発表された 1-2 月累計の統計の概要は以下のとおり。

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各種統計の公表

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概況・マクロ経済政策

□第 13 期全人代第 4 回会議は 11 日「、第 14 次五ヵ年計画(2021-2025)と 2035 年長期ビジョン目標」を採択して閉幕した。(3/12 人民日報 p1)

□国務院弁公室は 12 日、今回の政府活動報告の修正箇所は 81 カ所あり、うち民生関連の修正が全体の 37%を占めたことを明らかにした。また、昨年との比較では汚染防止と生態環境建設がより関心を集めるようになり、「炭素排出量ピークアウト」と「炭素中立」が頻出語となり、この分野で昨年の倍となる 31 の修正意見が提出された。(3/13 経済日報 p4)

□国家統計局は 15 日、2021 年 1-2 月の主要経済指標を公表した。前年同期比で、生産 35.1%、消費 33.8%、投資 35.0%となった。2019 年同期からの 2 年平均成長率は、生産 8.1%、消費 3.2%、投資 1.7%となった。(3/15 国家統計局 HPp1)

財政

□国家税務総局によると、今年 1 月末時点で、オンラインで納税などを行う電子税務局の企業ユーザー数は 6,526 万社で、ユーザー全体の 92.62%に達した。(3/15 人民日報 p18)

□国家税務総局は 11 日、第 13 次五カ年計画期間中の減税・費用削減額の規模が 7 兆 6,000 億元を超えたことを明らかにした。また、科学技術イノベーションを奨励するための減税・免税額は 5 年間で 2 兆 5,400 億元となり、年平均で 28.5%増加した。(3/11 国家税務総局)

金融・為替

□中国人民銀行が 10 日発表した金融統計によると、2 月末時点の M2 残高は前年同期比 10.1%増の223 兆 6,000 億元で、増加率は前月末を 0.7 ポイント、前年同期を 1.3 ポイント上回った。また、2月の社会融資規模は 1 兆 7,100 億元に達し、前年同期を 8,392 億元上回った。2 月の人民元建て貸出増加額は 1 兆 3,600 億元で、増加幅は前年同期を 4,529 億元上回った。(3/11 経済日報 p11)

□中国人民銀行と国家外貨管理局はこのほど、多国籍企業による資金調達の利便化を更に向上させるために、深センと北京で決済通貨の一体化に関する試行業務を展開することを明らかにした。(3/13 経済日報 p12)

4.貿易・海外直接投資

□海関総署によると、1-2 月の中国の自動車輸出額(シャシ―を含む)は 272 億ドルで、前年同期比93.4%増加した。(3/10 国際商報 p3)

□商務部は 12 日、外資による対中直接投資額(金融を除く)が 1-2 月は前年同期比 31.5%増の 1,767 億 6,000 万元だったと発表した。(3/12 商務部)

□中国とノルウェーは 11 日、自由貿易協定首席交渉代表テレビ会議を行った。双方は、モノ貿易やサービス貿易、投資、原産地規則、税関手続と貿易利便化、衛生と植物衛生措置、技術的貿易障壁、紛争解決、協定序文などについて踏み込んだ意見交換を行い、これまでの共通認識を踏まえ、更に多くの進展を得た。(3/15 国際商報p1)

□商務部流通発展司は 9 日、内需拡大戦略を実施し、消費の利便化と国民が便利なサービスを受けられるようにするために、「都市の 15 分以内便利な生活圏の建設ガイドライン(意見募集稿)」を起草し、18 日まで意見・提案を受け付けることを明らかにした。(3/10 商務部)

産業・企業(国有企業を含む)

■9 日に蘇州で開催された「蘇州高新区対日協力交流会・日本企業 600 社突破記念イベント」では、新規事業 37 件の調印式が行われ、投資総額は 108 億元に上った。データによると、現在同エリア内の日本企業数は 605 社に達し、日本からの累計投資総額は 200 億ドルを超えた。(3/11 国際商報 p7)

□中国情報通信研究院がこのほど発表した報告によると、2 月の中国国内市場の 5G スマートフォンの出荷台数は 1,507 万 1,000 台で、携帯電話出荷台数全体の 69.3%を占めた。(3/15 人民日報 p10)

□中国森林資源試算研究成果発表会によると、第 9 回全国森林資源精査最終年度 2018 年を基準に試算した中国の林地と林木の資産総額は 25 兆 500 億元に達した。うち、林地の資産額は 9 兆 5,400 億元、林木の資産は 15 兆 5,200 億元だった。(3/14 人民日報 p6)

□中国自動車工業協会によると、中国の新車生産・販売台数が1-2 月は 389 万台と 395 万 8,000 台で、2019 年同期比で 2.9%、2.7%増加した。うち、新エネ車の生産・販売台数は 31 万 7,000 台と28 万 9,000 台で、2019 年同期比で 110%、96.1%増加した。(3/15 国際商報 p1)

■12 日、国家市場監督管理総局は、テンセント、美団、ジントン、バイドゥ、ディディ、ソフトバンク等のインターネットプラットフォーム事業者に対して、事業者集中(企業結合)に際して必要な独禁法上の事前届出を行わなかったとして、各 50 万元の制裁金を課す行政処分を行った。(3/12 国家市場監督管理総局独占禁止局)

■中央電視台財経チャンネルは 15 日、消費者の日特別番組において、顔認証システムにより個人情報を取得する監視カメラ、就職サイトの履歴書の違法な売買、羊の赤身肉を増やす添加物の使用、360 や UC ブラウザの虚偽公告、使用済み鉄筋の安全性に問題のある再利用のほか、フォードやインフィニティの故障が頻発する問題などを取り上げた。(3/15 中央電視台)

農業・農村

□農業農村部はこのほど、各主要食糧生産地域における栽培・収穫作業の総合機械率が 80%を超えたことを明らかにし、各地に対し、機械化レベルを更に向上させ、2021 年の食糧生産の目標達成に必要なサポートを提供するよう求めた。(3/15 人民日報 p10)

労働・社会保障

□国家医療保障局がこのほど発表した「2020 年医療保障事業発展統計速報」によると、2020 年末時点、中国の基本医療保険の加入者は 13 億 6,000 万人に達しており、加入率は 95%以上で安定している。(3/10 国際商報p2)

□人力資源社会保障部中国労働社会保障科学研究院の金維剛院長は、法定退職年齢の漸進的延長の実施に関するインタビューに応じて、その実施の必要性、第 14 次五カ年計画に規定された実施に当たっての原則(「小歩調整」、「弾性実施」、「分類推進」、「統一的計画・各方面配慮」の原則)の具体的なイメージ、国際的に定年延長は高齢化に対応する普遍的対応策であって世界各国の経験を参考にしていくべきことなどを答えた。(3/16 中国労働保障報 p.1,3)

□多くの若者も定年延長に反対している。若者の任務は出勤と出産であり、老人が定年退職しないと、子供を連れていく人がいなくなる。支持者は現在の給料が高い人が多く、早く退職したくないのだろう。(3/16 暮潮从去早潮来)

環境・エネルギー

□国家エネルギー局によると、2 月の社会全体の電気使用量は前年同期比 18.5%増となる 5,264 億キロワット時であった。(3/14 人民日報 p1)

科学技術・イノベーション

□3 月 16 日出版の党機関誌『求是』に掲載された習近平総書記の重要文章『世界の主要な科学センターとイノベーションの高みとなるべく努力する』は、「今日ほど、科学技術が国家の将来の命運と人民の生活福祉に深く影響したことはない」「我々は歴史上どの時期よりも、世界の科学技術強国を建設しなければならない」「自主イノベーションは我々が世界の科学技術の高峰に登る道である」等と強調している。同文章は 2018 年 5 月の中国科学院・中国工程院院士大会において習総書記が行った講話の再録(部分)。王志剛・科技部長、侯建国・中国科学院院長、李暁紅・中国工程院院長らの論文も掲載された。(3/15 新華網)

□12 日、海南文昌航天発射場にて「長征 7 号 A」ロケット 2 号機の打上げに成功した。同ロケットは長征 7 号の改良版で、静止衛星の打上げに用いられ、静止トランスファ軌道への打上げ能力は 7 トン以上。(3/12 新華網)

□西蔵(チベット)自治区科学技術庁は 13 日、中国科学院国家天文台が主導し、チベット自然科学博物館等の機関が協力する、科学研究・普及用の「高標高地域 1 メートル級屈折望遠鏡建設」プロジェクトが始動したと明らかにした。完成すれば世界最大口径の屈折望遠鏡となる。(3/14 新華網)