在中国日本大使館経済部 中国経済週報(2021.1.21~2021.1.27)
WHO の役割を発揮させ、人類の衛生健康共同体を構築し、WTO と国際金融通貨システムの改革を推進し、世界のデジタル・ガバナンス規則の制定を検討し、「パリ協定」を実行し、「持続可能な開発のための 2030 アジェンダ」を実行しなければならない。
(注)WEF は「ダボス会議」を例年 1 月スイスのダボスで開催(今年は新型コロナの影響で 5 月になる予定)。今次会合で議論した内容は 5 月のダボス会議に反映される。
- 1 月下旬、各地方で、2020 年通年の成長率実績が公表されると共に、地方の人民代表
大会にて 2021 年の成長率目標が発表されている。主な例は以下のとおり。
(1)20 年の実績:北京 1.2%、上海 1.7%、広東 2.3%、山西 3.6%、海南 3.5% 等。(2)21 年の目標:北京 6%以上、上海 6%以上、広東 6%以上、山西 8%、海南 10%以上 等。
IMF が世界経済見通しを公表
- 26 日、IMF は最新の世界経済見通しを公表した。中国の予測値は 2021 年 8.1%(昨年
10 月時点から▲0.1)、2022 年 5.6%(初出)となった(注 1)。直近までの新型コロナの影響、経済政策、ワクチンの動向等を踏まえ、幾つかの国々では 2021 年の予測値が上方修正されたが、引き続き極めて不確実性が高いとされた(注 2)。
(注 1)中国は 2020 年の成長率実績が 2.3%と、IMF の前回予測値を 0.4 上回ったため、2021 年の予測値が下方修正された。2020 年、中国は数少ないプラス成長の国となる見込み(他 G20 ではトルコがプラス成長(1.2%)との予測)。(注 2)他の主な予測値は以下のとおり(カッコ内は昨年 10 月時点からの修正幅)。
2020 年 世界経済▲3.5%(+0.9)、米国▲3.4%(+0.9)、ユーロ圏▲7.2%(+1.1)、日本▲5.1%(+0.2)。
2021 年 世界経済 5.5%(+0.3)、米国 5.1%(+2.0)、ユーロ圏 4.2%(▲1.0)、日本 3.1%(+0.8)。
2022 年 世界経済 4.2%、米国 2.5%、ユーロ圏 3.6%、日本 2.4%(いずれも初出)。
人民銀行、非銀行決済業者に対する新たな規制案を公表
- 20 日、人民銀行は「非銀行決済機構条例案」を意見公募手続に付した。アリペイやWeChat Pay 等決済業者に対する独占禁止等の観点からの規制となっている(例:市場シェアが 1 社で 3 分の 1(あるいは 2 社で 2 分の 1 等)に達すれば人民銀行が市場監督管理総局と協議し警告できる、市場における支配的地位の有無を同局に審査させる、同局に事業分割等の是正措置命令を提案できる 等)。
2020 年の直接投資を発表
- 20 日、21 日の商務部の発表によれば、2020 年の対中直接投資が前年比 4.5%の 1,443 億 7,000 万ドルとなり、史上最高を更新した。また 2020 年の中国企業による対外直接投資は前年比▲0.4%の 1,101 億 5,000 万ドルとなった。
新型コロナ関連の動向
- 27 日、国家衛生健康委員会は、全国の新型コロナ・ワクチンの接種が延べ 2,276 万剤を超えたことを明らかにした。旧正月までの期間は引き続き、医療、検疫、コールドチェーンを含む感染リスクの高い重点グループ・重点地区への接種を中心的に実施する。
- 25 日、中共中央弁公庁・国務院弁公庁は、旧正月の連休は移動を控え現所在地で過ごすことを求める通知を発表した(注)。また、商店等の営業継続やインターネット等を通じた娯楽を増加させることで、人々の生活保障を強化すること等を求めた。
(注)通知では、高リスク地域の人々は現所在地で年越しをせねばならないこと、中リスク地域の人々は原則現所在地で年越しをすること、特殊な事情で移動する者は感染症予防・抑制機関の承認を経ること、低リスク地域の人々は必要がなければ移動せず現所在地で年越しをするよう求めている。
- 20 日、中国科学院と中国工程院が主催する 2020 年の「中国 10 大科学技術進歩ニュース」が発表された。具体的には以下のとおり。①月探査機「嫦娥 5 号」が中国初の地球外天体サンプル・リターンを実現 ②北斗 3 号システム最後の衛星の打上げ成功・北斗グローバル・システム衛星ネットワークが完成 ③無人潜水艇・有人潜水艇の新たな進展 ④世界に先駆け水平井堀削技術で深海メタン・ハイドレートを掘削 ⑤小麦の赤カビ病耐性品種開発に成功 ⑥「量子計算超越性」のマイルストーンに到達 ⑦生物多様性の変化の歴史を再現 ⑧次世代核融合実験装置が完成 ⑨20 年以上未解決の幾何学の難題を攻略 ⑩米中チームが高性能計算応用分野の最高賞「ゴードン・ベル賞」を受賞。2020 年の特許関連統計が発表
- 22 日、国家知識産権局は 2020 年の中国の特許関連データを発表した。中国の発明特許登録件数は 53 万件(2019 年 45.3 万件)(注)、中国国内の有効特許保有件数は 221 万3,000 件(2019 年 186.2 万件)となった。1 万人当たりの保有数は 15.8 件となり、第 13 次五カ年計画の目標(1 万人当たり 12 件)を 2019 年に引き続き上回った。
(注)なお、2020 年の中国の特許出願件数は現時点 (1 月 26 日)で未発表だが、1-11 月の特許出願件数は 140.3 万件。中国の特許出願件数は 2011-19 年の 9 年連続世界一で、2020 年も世界一となる見通し。
概況・マクロ経済政策
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①マクロ経済政策の協調を強化し、世界経済の強靭、持続可能で、バランスがとれ、包摂性のある成長を共に推し進める、②イデオロギーや偏見を捨て、ともに平和共存、互恵ウィンウィンの道を歩む、③先進国と発展途上国のギャップを克服し、各国の発展と繁栄をともに推し進める、④手を携えて世界的な試練に対応し、人類の素晴らしい未来をともに築く。習主席は世界の問題は複雑で入り組んでおり、問題を解決するための活路は多国間主義を擁護・実践し、人類運命共同体を推進することであると指摘した。(1/25 新華網)
□李克強・国務院総理は 20 日、国務院常務会議を開き、地方政府などが法的根拠のない税金や行政費用をみだりに徴収する問題を断固として制止し、法に基づいて税金を秩序立てて徴収し、企業や大衆の不合理な費用負担からの解放を確保する方針を示し、全国で特別取締を実施することを決定した。(1/22 人民日報 p2)
□国家発展改革委員会は 19 日、定例記者会見に於いて、中国には経済の安定的な回復をより強固にする条件と能力があるとの認識を示したとともに、2021 年も 5G や工業ネット、ビックデータなどを中心とした「新型インフラ投資」と「新型都市化建設」を引き続き推進する方針を明らかにした。また、2021 年には高基準の市場システムの構築に関する行動計画を策定・実施するとともに、知的財産の保護制度を整備し「市場参入ネガティブリスト(2021 年版)」を公表すると述べたほか、海南自由貿易港と深セン市の先行モデルエリアの市場参入規制の緩和に関する特別措置を打ち出すことを明らかにした。(1/20 経済日報 p3 他)
□中国人民銀行が 19 日発表した企業家の中国マクロ経済情勢に対する判断を示す「企業家マクロ経
済熱度指数」は、2020 年 10-12 月期に 34.4%となり、前期比 6.7 ポイント、前年同期比 2.6 ポイント上昇した。(1/20 人民日報 p10)
□各地方で、2020 年通年の成長率実績が公表されると共に、地方の人民代表大会において、2021 年の成長率目標が発表されている。2020 年の成長率実績:北京 1.2%、上海 1.7%、広東 2.3%、山西3.6%、海南 3.5%等。2021 年の成長率目標:北京 6%以上、上海 6%以上、広東 6%以上、山西 8%、海南 10%以上等。(1/26 経済参考報他)
□18 日、国家統計局は、2020 年の居民可処分所得は全国平均 32,189 元(名目+4.7、CPI 調整後+2.1 )、都市平均 43,834 元(名目+3.5、CPI 調整後+1.2)、農村平均 17,131 元(名目+6.9、CPI 調整後+3.8 )と発表するとともに、都市/農村所得比率は 2.56 倍、昨年比 0.08 ポイント縮小したと強調した。なお、都市/農村所得比率は本統計が発表された 2013 年(2.81 倍)以降、5 年連続の微減。また、同委員会は同じく 18 日、2020 年の居民消費支出は全国平均 21,210 元(名目-1.6、CPI 調整後-4.0)、都市平均 27,007 元(名目-3.8)、農村平均 13,713 元(名目-2.9)といずれも前年比マイナスであることを発表した。(1/18 国家統計局 HP 他)
財政
□国家税務総局は 20 日、2020 年の全国の税収が前年比 2.6%減の 13 兆 6,780 億元であったことを明らかにした。また、税収が一般公共予算収入に占める割合が 2020 年は 75.5%で、2019 年を 1.7 ポイント上回るという見通しを示した。(1/21 経済日報 p8)
金融・為替
□中国人民銀行は 20 日、2,800 億元の 7 日物リバースレポの公開市場操作を実施し、資金を供給したが、同日 20 億元が満期となり、差し引き 2,780 億元の純供給となった。1 日の資金供給としては最近 4 ヵ月以来最大規模。同行は、「銀行システムの流動性を合理的な範囲で潤沢に維持する」と説明した。(1/21 国際商報p1)
□中国人民銀行はこのほど、「非銀行決済機構条例(意見募集案)」に関する意見募集稿を公開し、パブリックコメントの受付を開始した。同条例では、決済サービス市場を更に規範化し、独占禁止や金融リスクへの防止を強化していく方針が示された。(1/21 経済日報p8)
□梁涛・銀行保険監督管理委員会副主席は 22 日、銀行業・保険業の運営が 2020 年は、引き続き安定かつ良好な態勢を保っているとの認識を示した。データによると、2020 年末時点の銀行業の総資産は 319 兆 7,000 億元で、前年比 10.1%増加した。負債総額は 293 兆 1,000 億元で、前年比 10.2%増加した。2020 年末時点の不良債権残高は年初より 2,816 億元増の 3 兆 5,000 億元、不良債権比率は年初より 0.06 ポイント減の 1.92%だった。また、2020 年末時点の民間企業向けの貸付残高は 50 兆元で、前年比 14%増加した。(1/23 人民日報 p2)
貿易・海外直接投資
□海関総署はこのほど、6 月 15 日から鉄道運送の通関所要時間を更に短縮する業務モデルを実施することを明らかにした。中国と欧州を結ぶ「中欧班列」を含む国際鉄道貿易の通関所要時間の短縮が実現される。(1/20 国際商報 p1)
□商務部は 20 日、2020 年の対中直接投資(金融分野を除く)が前年比 6.2%増の 9,999 億 8,000 万元(米ドル換算で 4.5%増の 1,443 億 7,000 万ドル)となり、史上最高を更新したと発表した。また、昨年に新規設立された外商投資企業の数は 3 万 8,570 社だった。(1/20 商務部 HP 他)
□商務部は 21 日、中国企業による 2020 年の対外直接投資は前年比 3.3%増の 1,329 億 4,000 万ドルであり、うち金融分野を除く対外直接投資が前年比 0.4%減の 1,101 億 5,000 万ドルであったと発表した。(1/21 商務部HP 他)
産業・企業(国有企業を含む)
□21 日、商務部報道官は定例記者会見にて、新型コロナウイルス感染症の予防・抑制が実施される中、春節期間中の市場供給を安定させるため、野菜・肉類等の備蓄を適時に放出する方針を示した。また、2020 年 12 月以来、商務部及び関連部門は中央備蓄豚肉 6.5 万トン強、牛・羊肉 2,200 トン強を既に市場に放出したことを明らかにした。(1/22 経済日報網)。
□国有資産監督管理委員会は 19 日、中央企業の純利益が 2020 年は前年比 2.1%増の 1 兆 4,000 万元に達したと発表した。(1/20 経済日報 p1)
□工業・信息化部はこのほど、「小巨人企業(専門化・精細化・特色化・斬新化の特徴を備えた企業)」の第二弾として 1,584 社のリストを発表した。これまでに、同部は国家レベルの「小巨人」企業 1,832 社を育成しており、優良企業を段階的に育成するシステムが形成されている。(1/20 人民日報 p18)
□北京市と黒竜江省ハルビン市を結ぶ高速鉄道「京哈高鉄」が 22 日に全線開通する。設計時速 350キロメートル、北京から瀋陽市までを最速 2 時間 44 分、ハルビン市までを 4 時間 52 分で結ぶ。(1/22 経済日報 p8)
農業・農村
□22 日、中国の「動物防疫法(改正版)」ほか 2 つの法律(「行政処罰法(改正版)」、「海警法」)が第 13 期全国人民代表大会常務委員会第 25 回会議で可決され、習近平国家主席による主席令への署名を経て公布された(1/23 新華網日本語版)。
□国家統計局によると、山東省の農林畜産・漁業生産高は、2020 年に初めて 1 兆元の大台を突破し、1 兆 190 億 6,000 万元に達した。同省は中国で初めて農林畜漁業生産高 1 兆元を超えた省となった。(1/20 人民日報 p1)
労働・社会保障
□人力資源社会保障部等計 8 機関は、重点業種の労働災害発生率を 20%程度減少させるとの目標や9 つの主要任務などを定めた「工傷予防 5 年行動計画(2021-2025 年)」を策定し、昨年 12 月 18 日、各省等あてに通知した。(1/21 人力資源社会保障部HP)
□18 日、国家統計局は、2020 年の新規都市就業者は1,186 万人、農民工総量は前年比517 万人(1.8%) 減の 2 億 8560 万人だったと発表した。なお、新規都市就業者数は毎年 1,300 万人以上であった 2016-2019 年と比べ減少したが、2016-2020 年累計で 5,000 万人以上とする 5 カ年目標は達成したことになる。また、農民工総量が前年比減少したのは、少なくとも記録が確認できる 2008 年以降で初めて。(1/18 国家統計局 HP 他)
□交通運輸部は 20 日、2021 年の「春運(旧正月前後の特別輸送態勢)」期間中に全国の旅客輸送量は延べ 17 億人(2019 年比 4 割以上減、2020 年比 1 割以上増)に達するとの見通しを示した。民航局は26 日、27 日零時から既に購入済みの春節期間(1 月 28 日-3 月 8 日)の航空券について無料で払い戻し、または 1 回以上の日程変更できるとする通知を発表した。(1/21 人民日報 p13 他)
□国家衛生健康委員会は 27 日、全国の新型コロナワクチンの接種が延べ 2,276 万回を超えたことを明らかにした。(1/27 中国政府網)
□24 日、山東省金鉱山爆発事故で坑内に閉じ込められた作業員 22 名のうち、11 名が 2 週間ぶりに救出された。(1/25 人民日報 p1)
環境・エネルギー
□国家エネルギー局はこのほど、2020 年の全国の電力消費量が前年比3.1%増の7 兆5,110 億キロワット時だったと発表し、電力需要が安定的に回復しているとの見方を示した。(1/21 人民日報p10)
□雲南省農業農村庁によると、雲南省は長江「十年禁漁」の漁業廃業任務に積極的に取り組み、すでに長江流域全域の禁漁を実現し、条件を備え就業意欲のある 333 名の廃業漁民全員が転職・就業を実現した。(1/24 新華網)
科学技術・イノベーション
□20 日、中国科学院と中国工程院が主催し、両院院士が投票で選出する 2020 年の「中国 10 大科学技術進歩ニュース」と「世界 10 大科学技術進歩ニュース」が北京市で発表された。入選した中国科学技術進歩ニュースは以下の通り。①月探査機「嫦娥 5 号」が中国初の地球外天体サンプルリターンを実現、②北斗 3 号システムの最後の一機の打ち上げが成功、北斗グローバルシステム衛星ネットワークの設置が完了、③中国の無人潜水艇・有人潜水艇の新たな進展、④中国が世界に先駆け水平井堀削技術で深海メタンハイドレートを掘削、⑤小麦の赤カビ病耐性品種開発に成功、⑥「量子計算超越性」のマイルストーンに到達、⑦科学者が地球の 3 億年以上の生物多様性の変化の歴史を再現、⑧中国が最高パラメーターの「人工太陽」装置(※次世代核融合実験)を完成、⑨中国の科学者が20 年以上未解決だった幾何学の難題を攻略、⑩機械学習による 1 億以上の原子シミュレーションを実現し米中チームが高性能計算のアプリケーション分野の最高賞「ゴードン・ベル賞」を受賞。(1/21 人民網他)
□国産大型旅客機 C919 は 20 日間のテストを経て、内モンゴル自治区における寒冷地テスト飛行に成功した。テスト期間中の現地の最低気温は零下 40 度弱だった。(1/20 人民日報 p10)
□20 日零時 25 分、中国は西昌衛星発射センターから長征 3 号乙ロケットに搭載された通信衛星「天通 1 号 03」を打ち上げた。衛星は予定の軌道に順調に乗り、打上げが成功した。「天通 1 号」は中国が独自に開発した衛星モバイル通信システムであり、中国およびその周辺地域、中東、アフリカなどの関連地域と太平洋、インド洋の大部分の海域の利用者に向けて全天候・24 時間の通信サービスを提供する。(1/21 人民日報 p12)
□22 日、国家知識産権局は、2020 年中国の登録発明特許数が53 万件(2019 年36.1 万件)に上ったと発表した。また、同年末時点の中国本土における有効特許保有件数は221 万3,000 件(2019 年186.2 万件)で1 万人当たりの保有数は 15.8 件となり、第 13 次五カ年計画綱要で目標とされた 1 万人当たり同件数 12 件を去年に引き続き上回ったことを明らかにした。中国の特許出願件数は2019 年まで9 年連続で世界一となり、2020 年も世界一となる見込み。(1/22 国家知識産権局HP 他)
主要国との経済関係
□フィリピン運輸省と中国関連企業はこのほど、同国の「スービック~クラーク間鉄道建設事業契約に調印した。事業総額は 9 億 4,000 万ドルで、両国政府が調印する過去最大の金額となった。(1/16 新華網他)
□スウェーデンが同国の 5G 通信ネットワークの整備から中国企業を排除する方針との発表を受け、高峰・商務部報道官は21 日、「このようなやり方はWTO の基本原則や国際通用の規則に背き、中国企業の合法的な権益を損なう。中国側は断固として反対する」と表明した。(1/22 国際商報p1)