在中国日本大使館経済部 中国経済週報(2021.1.15~2021.1.20)

2021/01/26

 

  • 18 日、国家統計局は GDP 成長率を公表した。2020 年 10-12 月期は前年同期比 6.5%、通年では前年比 2.3%となった(注 1)。同年の GDP は 101.6 兆元と、100 兆元を上回った。
  • 寧吉喆・国家統計局長は、同日の記者会見で以下を強調した。

(1)2020 年は極めて尋常でない一年だったが、中国は世界から注目され歴史に残る成果を挙げ、世界の主要経済体の中で唯一のプラス成長となる見込みである。経済社会発展の主要目標任務の達成状況は予想を上回った(注 2)。

(2)GDP が 100 兆元を超えたことは、経済の実力・科学技術力・総合国力の顕著な向上を表し、新たな発展の枠組構築の堅固な基礎となる。

  • 併せて公表された月次指標の概要は以下のとおり。

(1)鉱工業生産:12 月は前年同月比 7.3%(前月から+0.3)、通年で前年比 2.8% (2)投資:通年で前年比 2.9%

(3)小売総額:12 月は前年同月比 4.6%(前月から▲0.4)、通年で前年比▲3.9%

(注 1)6.5%の内訳:消費 2.6%、投資 2.5%、外需 1.4%。2.3%の内訳:消費▲0.5%、投資 2.2%、外需 0.7%。(注 2)2020 年 5 月の全人代における政府活動報告では、新型コロナを受けた国内外の不確定性を踏まえ成長率目標は設定されなかったが、雇用・物価安定等の目標は示された。(例)都市部新規就業者数 900 万人以上(実績は 1,186

万人)、都市部調査失業率 6%前後(実績は 5.6%)、消費者物価上昇率 3.5%前後(実績は 2.5%)等。

発改委が記者会見でマクロ政策の方針を説明

  • 19 日、厳鵬程・発改委国民経済総合司司長は、定例記者会見で概要以下を述べた。(1)現在、一部の中小零細企業や自営業者の生産経営は多くの困難に直面し、市場の需要回復はまだ制約があり、世界経済情勢には依然として大きな不確定性がある。

(2)現在と長期、マクロとミクロを統一的に計画し、政策のタイミングと効果を把握し、安定回復のトレンドを確保し、「政策の崖」を発生させないようにする。

(3)最近、国内の一部地域で感染症の流行が発生し、春節休暇を控え、消費市場への影響は不可避である。本年は、既存の政策の実行と同時に、住民の消費能力の向上・消費環境の改善・消費の新たな成長ポイントの開拓等について、的確な施策を強化する。

  • 15 日、李克強・国務院総理は国務院常務会議を開催した。会議は「両節(元旦節・春

節)」の間、新型コロナ・災害の影響を受け困難に直面する大衆への生活保障を強化する手配を行った。概要は以下のとおり。

(1)市場の供給と価格安定を維持し、生活保護受給者等に適時に関連手当を支給する。(2)貧困階層のモニタリングを強化し、保障すべき人への保障の漏れを防止する。

(3)出稼ぎ農民や学校に留まる学生等の生活への関連手配をしっかり行い、「留守児童・老人」(注 1)へのケアサービスを強化する。

(4)洪水・冠水災害の被災大衆の基本的生活をしっかり保障する。

  • この他会議は、政府による医療保険対象の薬品の調達制度(注 2)を更に改善し、患者の薬品代負担を軽減していく方針を示した。

(注 1)両親や子女が都市に出ており、農村に残っている子女及び高齢者を指す。

(注 2)会議によれば、政府が昨年末までに既に集中調達を 3 回実施した結果、医薬品は平均 54%値下がりし、年間530 億元余りの費用が削減された。

  • 15 日、全国春節輸送テレビ電話会議が開催された。主な内容は以下のとおり。

(1)春節輸送期間(1 月 28 日‐3 月 8 日、計 40 日)、健康コードの政策・標準の統合、全国相互承認、一つのコードでの通行を実施せねばならない。

(2)春節輸送期間前の鉄道切符の事前売上げは平年より 6 割近く減少し、旅客数は延べ

2 億 9,600 人にまで減少する見込み(注 1)。

(3)春節(2 月 12 日)以降の鉄道切符の前売期間を 15 日間に、無料払戻し期間も乗車日の 8 日前にそれぞれ短縮する(注 2)。

(注 1)さらに、20 日、政府は「春運」の旅客数が、今年は 2019 年比で 4 割以上減るとの見通しを明らかにした。

(注 2)当初は、前売り期間は 30 日間、無料払戻し期間は乗車日の 15 日前とする計画であった。

  • 20 日、「2021 年全国オンライン年貨祭」(注)が開始された(期間:2 月 18 日まで)。商務部は、春節前の食品・贈答品(年貨)のまとめ買いの時期に、消費者をネット通販に誘導することで、感染症予防と消費拡大を両立させるものと説明している。期間中、政府は通販プラットフォーム・関連企業に関連商品の潤沢な供給と割引等の販促活動の実施を働きかける。

(注)参加するのは、タオバオ、天猫、京東等の大型 E コマースのプラットフォーム、国美、蘇寧、フーマー鮮生等のネット・現地販売融合型企業、地方の E コマース。

レアアース管理条例(意見募集稿)が公開

  • 15 日、工業・信息化部は、レアアース管理条例(意見募集稿)を発表した。同条例は、レアアースの採掘・製錬分離等の生産経営秩序を法に基づき規範化し、資源の秩序ある開発利用を進めることを目的とし、主に以下について規定している(計 29 条)。

(1)レアアース採掘・製錬分離事業への新規参入時の承認手続(2)採掘と精錬分離に関する総量指標管理制度の明確化

(3)同指標に基づく各企業の生産管理の強化

(4)許可を受けない違法採掘、分離・精製の禁止、違法製品の取引禁止(5)採掘、分離・精製、金属化の各段階を通じたトレーサビリティの確保(6)同条例に違反した場合の罰則の明確化

  • 14 日、米国・国防総省は、「中国人民解放軍との関係」を理由として、スマートフォンメーカー大手の小米(シャオミ)等、中国企業 9 社をエンティティーリストに追加したと発表した(注)。これに対し 15 日、中国外交部報道官は、「中国は必要な措置を講じ、中国企業の正当で合法的な権益を断固として守る」等と表明した。

(注)国防総省が作成する「中国の共産主義軍事企業」をまとめたリストであり、これまで計 35 社が対象となっている(今回の 9 社を含めて計 44 社)。米国の投資家は指定企業に対する直接・間接の株式投資が禁止される。9 社には小米の他、航空機メーカーの中国商用飛機(COMAC)、半導体装置メーカーの中微半導体設備等が含まれる。

各種統計の公表

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■:日本関連記事

概況・マクロ経済政策

□国家統計局は 18 日、2020 年 10-12 月期の GDP 成長率は前年同期比 6.5%、2020 年通年の成長率は 2.3%となったと発表した。2020 年通年の GDP 総額は 101.6 兆元と、初めて 100 兆元を突破した。統計局は、2020 年 5 月の全人代の政府活動報告において示された経済社会発展の主要目標任務の達成状況は、予測を上回ったと評価した。(1/18 国家統計局 HP)

財政

□財政部は 12 日、国有資本を社会保障金(年金)の原資に組み込む政策について、2020 年末までに中央企業 93 社および中央金融機関から国有資本 1 兆 6,800 億元の資金を年金基金に移管する手続きが完了したと発表した。(1/13 経済日報 p2)

金融・為替

□中国支払清算協会がこのほど発表した「2020 年モバイル決済利用者アンケート報告書」によると、モバイル決済の利用者のうち、毎日利用する人が 74%で、前年より 4.4 ポイント増えた。また、一回金額 100 元以下の小口決済が全体の 38.4%を占め、前年比で 23.3 ポイント上回ったことが分かった。(1/14 人民日報 p7)

□中国銀行保険監督管理委員会、中国人民銀行はこのほど、商業銀行が自主経営以外のインターネットプラットフォームを通じて個人預金商品を販売することを禁止する方針を発表した。(1/18 人民日報 p1)

貿易・海外直接投資

□関連データによると、2020 年 1-11 月の中国とアフリカの貿易額は前年同期比 10.6%減少した(なお 1-12 月の貿易額は前年同期比 10.5%減少)。1-10 月の中国対アフリカ直接投資額が 2019 年に比べて横ばいになった。(1/13 国際商報 p1、1/14 海関総署)

□海関総署によると、2020 年1-11 月の中国とEU の貿易額は前年同期比4.7%増の4 兆500 億元だった(なお1- 12 月は前年同期比5.3%増の4 兆4,957 億元)。中国はEU にとって最大の貿易相手国になった。また、2020 年11 月時点でEU27 か国の対中実行ベース投資額は1,179 億8,000 万ドル、中国対EU の直接投資額は800 億ドルを超えた。(1/14 人民日報p3、1/14 海関総署)

□海関総署は 14 日、WTO と各国が既に公開したデータによると、2020 年の 1-10 月の中国の輸出入、輸出、輸入が国際市場に占める割合はそれぞれ 12.8%、14.2%、11.5%で史上最大となったと発表した。(1/14 海関総署)

□高峰・商務部報道官は 14 日、定例記者会見で、「中国側は 2020 年 12 月から東アジア地域包括的経済連携協定(RCEP)に対する国内の許認可プロセスを開始させ、現在、関税規則の調整や義務リストの整理、研修育成などを行いつつ、6 カ月以内に完成する見込みだ」と述べた。(1/15 国際商報 p1)

産業・企業(国有企業を含む)

□中国中小企業協会の最新データによると、2020 年第 4 四半期の中小企業発展指数は 87 で前期を 0.2 ポイント上回り、3 期連続で回復し、第1 四半期以後の最高数値を記録した。(1/13 人民日報p10)

□中国民用航空局によると、2020 年における民用航空の運送総量、旅客運送量、貨物・郵政運送量はそれぞれ 798 億 5,000 万トン・キロ、延べ 4 億 2,000 万人、676 万 6,000 トンで、15 年連続で世界 2 位になった。(1/13 人民日報 p10)

□国家統計局によると、2020 年 1-10 月の液体ミルク生産量は 2,150 万 9,500 トンで、前年同期比3.32%増加した。また、1-10 月の一定規模以上のミルク生産企業の主要業務収入は前年同期比 6.6% 増加し、3,473 億 3,200 万元となった。(1/13 経済日報p9)

□工業信息化部はこのほど、「工業インターネットネットワーク・イノベーション発展行動計画(2021-2023 年)」を発表し、工業インターネットネットワーク関連新型インフラ建設や、新モデル、新業態、産業総合実力を一層推進する方針を示したとともに、特に 2023 年に 10 の重点産業に 30 の5G 通信可能な工場を建設する目標を掲げた。(1/15 人民日報 p10)

■工業信息化部はレアアースの採掘、製錬分離等の生産経営秩序を法に基づき規範化し、レアアース資源の秩序ある開発利用を進めるため、レアアース管理条例(パブリックコメント募集稿)を起草し、15 日公開した。(1/15 工業信息化部)

農業・農村

□中国農業科学院副院長・万建民は 12 日、中国の品種遺伝資源総保存量は 52 万点を上回り、世界2 位になったと述べた。また、150 万点の品種遺伝資源を保存できる新国家作物遺伝資源バンクが今年運用開始する予定であることを示した。(1/13 人民日報 p10)

□水利部によると、政府による水利施設への拠出金が 2020 年は 7,700 億元に達し、史上最高を記録した。(1/13 人民日報 p14)

□国家食糧物資備蓄局によると、2020 年秋収穫食糧の買い付けが好調で、2021 年 1 月 5 日時点で秋収穫食糧の買い付け量は前年同期比 500 万トン増の 1 億 1,000 万トンに達した。買い付け状況をみると、市場化された買い付けの割合は前年より 8 ポイント上昇の 98%になった。(1/14 人民日報 p1)

□上海市農業農村委員会によると、上海市政府はこのほど、農業の質向上に向けた 5 年行動計画(2021-2025 年)を発表し、グリーン農業の生産拡大や農業のスマート化に取り組み、2025 年に 10万ムーの無人農場を建設する目標を掲げた。(1/14 人民日報 p7)

□劉煥鑫・農業農村部副部長は 13 日、国務院が主催した記者会見で、当面および今後における農業分野の重要な取組について、①糧食などの重要農産物の供給保障レベルの引き上げ、②農村産業の発展促進、③農村建設の実施、④農村ガバナンスの改善・強化など 4 点を提示した。(1/14 経済日報p8)

□農業農村部は 17 日、2020 年のコメ・小麦・トウモロコシの三大食糧の化学肥料使用率が 2015 年と比較して 5%増の 40.2%、農薬利用率が同 4%増の 40.6%であったことを明らかにした。13 次五カ年計画期間、農業農村部は引き続き化学肥料・農薬使用量増加ゼロ行動を展開し、所定の目標を実現した。(1/17 新華網)

労働・社会保障

□1 月 10 日午後、山東省煙台市の「棲霞金鉱」で爆発事故が起き、坑内にいた作業員 22 名が閉じ込められた。応急管理部は現地に専門救援隊を派遣し、救援活動を進めている。(1/13 経済日報 p2)

□1 月 12 日に開催された全国医療保障業務会議によると、2020 年時点の全国の基本医療保険加入者数は 13 億 6,000 万人、加入率は 95%以上を維持している。(1/14 人民日報p13)

□全国春節輸送テレビ電話会議が 15 日開催され、連維良・発改委副主任は、春節輸送期間中、健康コード統一政策・統一標準・全国相互承認と一つのコードでの通行を可能とし、特殊な必要により他地域の健康コードを認証しない場合には事前に国務院共同予防コントロール弁公室と春節輸送感染症予防・抑止専門班に報告し批准を受けなければならないと述べた。また、同会議において、李文新・国家鉄道集団有限公司副総経理は、春節輸送期間の鉄道チケットの事前売り上げは通常の年より 6 割近く減少し、春節輸送期間中の旅客数が延べ 2 億 9,600 人減少するとの見通しを示した。(1/16 経済日報 p3)

□人力資源社会保障部等は、公平かつ持続可能な年金制度改革に関し、2020 年末までに国有資本1.68

億元の社会保険基金への移転を完了したと公表した。(1/13 人力資源社会保障部 HP)

□15 日、外交部報道官は中国企業の開発した新型コロナウイルスのワクチンを第三国に提供するうえでの優位性として、安全性・有効性のほかに、超低温でのコールドチェーン貯蔵・輸送が必要ないことが、特に発展途上国がワクチンを使用するうえで非常に大きなメリットとなっていると述べた。(1/15 外交部)

環境・エネルギー

□中国共産党中央委員会弁公庁、国務院弁公庁はこのほど、「林長制(森林・草原の管理・保護活動を行う地方政府の指導層から指名する制度)の全面的確立に関する意見」を配布し、各地方に対し、しっかり実行するよう求めた。(1/13 人民日報 p1)

□データによると、第 13 次五カ年計画期間中における大口工業固体廃棄物の総合利用量は累計 69 億トンに上り、うち、2019 年の大口工業廃棄物の総合利用量は約 18 億トンに達し、付加価値生産額は約 1 兆 2,000 億元、関連会社の数は 3 万社を超えた。(1/14 人民日報 p14)

□国家発展改革委員会は 15 日、同日 24 時からガソリンとディーゼルオイルの価格をトン当たりそれぞれ 185 元と 180 元引き上げると発表した。(1/16 経済日報 p6)

科学技術・イノベーション

□中国が独自に建造した高温超伝導リニアのサンプル車両とテストラインがこのほど、成都で完成し利用を開始した。設計時速が 620 キロ。(1/14 経済日報 p6)

□中国海洋石油グループによると、中国が独自に建造した世界初の 10 万トン級半潜水式貯油施設の船体「深海一号」が完成した。最大貯油量は約 2 万立方メートル。(1/15 人民日報 p10)

主要国との経済関係

□ジョコ・インドネシア大統領は 13 日、同国を訪問している王毅・中国国務委員兼外相と会見した。王外相は、中国側はインドネシア側とともに、「一帯一路」の共同建設を推進し、ジャカルタ-バンドン間高速鉄道および「地域総合経済回廊」など重大プロジェクトの建設を加速させ、科学技術イノベーション分野の協力を更に強化していきたい等と述べた。(1/14 人民日報 p3)

□米国トランプ政権は 14 日、スマートフォンメーカー小米、航空機メーカー中国商用飛機(COMAC)等を含む 9 社を国防総省のブラックリストに追加した。また、中国海洋石油集団(CNOOC)や北京天驕航空産業投資(スカイリゾン)等 11 社を商務省のブラックリストに追加した。(1/15 ブルームバーグ)

■トランプ米政権はこのほど、中国通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)の一部サプライヤーに対して同社に部材を販売する免許の取り消しを通知した。(1/18 ロイター)